院長のブログ

小児の重症肝炎について2022.04.28

主に英国を中心とする欧州の国々とアメリカにおいて小児の重症肝炎の報告が続いております。現時点(令和4年4月27日)における報告をまとめてみました。
 最初の報告は2022年4月15日に英国からありました。発生国は英国(114例)、スペイン(13例)、イスラエル(12例)、アメリカ合衆国(9例)、デンマーク(6例)、アイルランド(5例未満)、オランダ(4例)、イタリア(4例)、ノルウェー(2例)、フランス(2例)ルーマニア(1例)及びベルギー(1例)で報告されています。報告された症例は生後1か月から16歳までです。少なくとも1人の死亡が報告されています。
 確認された症例の臨床症状は、著しい肝酵素の上昇を伴う急性肝炎で、多くの症例で、腹痛、下痢、嘔吐の消化器症状が先行し、肝酵素値(ASTとALT)500IU/L以上の上昇と黄疸が認められました。ほとんどの症例で発熱はありません。急性ウイルス性肝炎を引き起こす一般的なウイルス(A,B,C,D及びE型肝炎ウイルス)は、これらの症例からは検出されておりません。また、海外渡航や他国訪問との関連は、特定されていません。
 アデノウイルスは少なくとも74例から検出されており、18例がF型41と同定されています。新型コロナウイルスは、検査したもののうち20例で確認されました。さらに、新型コロナウイルスとアデノウイルスの共感染が検出されたのは19例でした。
 以上から考えられることはアデノウイルスの胃腸炎が流行した際には小児急性重症肝炎の可能性を考え、留意する必要があることになります。
今後の報告の推移をみなければ何とも言えませんが、ウイルス性胃腸炎の感染予防にも留意する必要があると思われます。感染の主因がアデノウイルスであれば、アルコールに対してアデノウイルスは耐性をもっていますから、食事前には石鹸を使った手洗いの励行が必要であるとのことです。