院長のブログ

学校に行けなくなっている子について2023.09.26

昨日また不登校気味のお子さんに出会いました。中学1年の男の子です。起立性調節障害での受診で2回目です。約1か月前にメトリジンを処方しての再診で、状態はほとんど改善していませんでした。朝は起きられず、登校できても午後からで、給食は学校ではできず昼食を自宅で摂ってから登校しているようです。土曜日は部活(吹奏楽)の練習があるが、これも参加できていないようでした。学校では親しい友人はいないとの返事で、ただし家に帰れば行き来している友人はいるとのことでした。家庭環境は母子家庭で、お兄ちゃんも不登校気味だったとのことでした。
 受診は午前中で、全く朝が起きられないというわけではなさそうで、朝起きて登校することを難しくしているのは、お母さんのお話では夜が十分寝られていないのが原因ではないかとお考えのようでした。こういった場合に睡眠剤を処方するのは時期尚早と判断して、午後からでも軽い運動をしてみたら、少し疲れて改善するのではないかと提案しました。ただしうまく効果が出るかは疑問だと考えてはいます。夜は11時頃には就寝しているとのことで、朝は7時過ぎに起きれば十分に学校には間に合うとのことで朝登校できていないのは、ほかに原因があるだろうと推測しましたが、無理に質問を続けても問題の解決にはすぐには至らないと考えて今回は別の質問に変えました。
 教室に入るのに抵抗はあるのかと聞いたところ、何か問題がありそうで、お母さんもそのあたりはご存じのようで、一応学校には当たってみられたみたいですが、効果的ではなかったようでした。ほとんど無口の子ですがその時やや怒りを含む口調でしゃべったのが印象的でした。多分このことが不登校の原因の一因であることは推測できるので、お母さんに再度学校に調整をお願いしていただくことをお勧めしました。
 私の外来ではご本人に今後の目標を立てて努力をしていただくようにしているのですが、今回は本人からは何の反応もありませんでした。このままでは不登校が進んでしまうと心配なケースでした。

 今医師として考えいることは、
①不登校を医療で救えるのか
 不登校を起こすかなりの原因として起立性調節障害がかかわっていることは間違いないと思われますが、起立性調節障害の治療を行っても不登校に関しては、効果的ではないことが多いのは間違いないと思っています。それでは心理療法を行えばよいのかとなると、それでも十分ではないと思います。一小児科医が手を出す問題ではないんじゃないかと考えているところです。現在の私の考えは医療単独で不登校を元に戻すことは困難ではないかと思います。
②不登校を救うスキルがあるのか
 不登校に対するマニュアルはあります。ただし、一小児科の診療所でそれに対応することは難しいと思います。私の少ない経験でしかないのですが、うまくいったケースは、私の話を聞いてくれて、ご本人の考えを積極的に伝えてくれる場合でした。すべてのお困りの方に対応するのは私の人間性では不可能と考えています。医療者として困っているお子さんに正面から向き合い対応できる人間性を持つ人のみが不登校を救えるのだとすれば、こんな不幸はお話はないと正直思います。
③不登校が社会の問題なのか
 不登校は現在のところ社会を揺るがす問題にはなっていないと考えます。新型コロナウイルス感染症がすぐに発熱外来の整備に向かったように、不登校に関して社会問題であれば、不登校外来の整備に向かうことでしょう。一診療所の小児科医がたいそうなことを言っても何も始まらないのは十分承知しておりますが、相当数の不登校の子供やその予備軍の子供たちが存在することは事実ですからそろそろ社会としての対応をもっと積極的に考える時期ではないかと思います。
④医師として不登校とどう向き合えばよいのか
 これは問題意識を拡散させることしかないと思いますが、だれか私よりも見識が高く、社会的にも認められた地位にある方々に、不登校に対して積極的な問題意識を持っていただければと考えます。